探偵 神宮寺三郎 復讐の輪舞

Novel

エピソード02 影の気配

事務所のドアを開けたのは、日に焼けた中年の男と髪色の明るい若者だった。

「初めまして、君島弘樹と申します」

「神宮寺三郎です」

弘樹は丁寧に頭を下げると、名刺を差し出した。
名刺には“君島製紙工場 代表取締役”と印字されている。

「裕太、名刺は?」

「あ!忘れた。へへ……すみません。君島裕太っていいます」

「馬鹿!あれほど名刺は携帯するようにと……。それに、その挨拶はなんだ!」

「まあまあ。だって、取引先じゃなくて、探偵さんでしょ?
 そんな堅苦しいこと言わないですよね?」

恐縮する弘樹を気に留めず、裕太は人懐っこい笑みを浮かべて話しかけてくる。

「ええ。詳しいお話はこちらでうかがいます。どうぞ」

「探偵事務所なんて初めて来たけど……
 普通のオフィスとあんまり変わらないんですね」

「裕太、きょろきょろするんじゃない」

真面目で堅実そうな父親と、自由に育ってしまった息子といったところか。
けれど、そのやりとりは不快ではなく、弘樹と裕太の仲は悪くはないのだろう。

「さっそく、お話をうかがいたいのですが……」

「はい……」

弘樹が事務所を訪れた理由と、自分たちについて語り始めた。
弘樹は君島製紙工場という小さな町工場を経営しているらしい。
裕太は一人息子で、父親の工場で働いている。
そして、最近、身の回りで妙なことが起きるというのだ。

「家や工場に届いた郵便物が開封されていることがあるんです。
 もちろん、警察にも届けました」

「けど、警察はあんまり動いてくれなくて。
 それで、探偵さんに相談することにしたんですよ」

弘樹はその開封されていた郵便物を数点持ってきていた。
それらの封は乱暴に開けられている。

「あとは車!オレや親父の車をこじ開けようとした跡とかもありました」

「最初は車上荒らしかと思ったんですが、
 そういったことが度々ありまして……何かおかしいと」

「不審な人物を目撃されたことは?」

「いえ、特には……。
 裕太は時折、家や工場の周りで人の視線を感じることがあると言いますが」

「オレも誰かを見たってワケじゃないんですけど。
 なんか、見張られてるような嫌な感じがするんですよね」

「裕太が電話では『危険なことが起きている』とか言ったそうで。
 そこまでのことではないんですが……」

「けど、何かあってからじゃ遅いですよね?」

「ええ……そうですね」

弘樹と裕太の話を一通り聞いて、俺は二人に頷いた。
身辺を荒らすような出来事が続いているということは、何か目的を持った犯人がいる可能性が高い。
調べてみる必要は充分にある。

エピソード02 影の気配

「では、君島さんからのご依頼は
 その不審な出来事について調べる……ということで、よろしいですか?」

「はい。もしかしたら、ただの悪戯の類かもしれません。
 その時は申し訳ないのですが……」

「悪戯だとしても、調べるに越したことはないでしょう。よろしくお願いします」

こうして――
明日から二週間、俺は君島家の周辺を調査することになった。

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