探偵 神宮寺三郎 復讐の輪舞

Novel

エピソード04 灰色の跡

夕暮れの事務所に突然鳴り響いた電話。
電話は依頼者である君島裕太さんからだった。

「じ、神宮寺さんが車に……!」

「先生がどうされたんですか!?」

「神宮寺さんが車に突っ込まれて!
 あ、いや、違った!突っ込まれそうになったっていうか!」

裕太さんは動揺しているようで、言っていることが要領を得ない。

「裕太さん、先生と話せますか?」

私まで取り乱してはいけないと、冷静に裕太さんに話しかける。

「は、はい……ちょっと待ってください」

電話には出られる状態なのだと、胸をなで下ろした。
程なく、受話器の向こうから先生の声が聞こえてくる。

「先生!どうされたんですか!?」

「洋子君、心配を掛けて悪い。裕太が先走っただけだ」

「事故に遭われたのかと……」

「狭い路地でスピードを出した車と接触しかけた。……故意か偶然かはわからないが」

「お怪我はありませんか?」

「ああ、車のナンバーを控えた。調べておいてくれ」

「はい」

私は車のナンバーをメモにとり、電話を切った。
先生に何事もなくてよかった……
けれど、安心するのは車について調べてからだ。
調査の結果、車は盗難車だとわかったが、
それが事件につながると断定できる材料は見つからなかった。
これまで何も起こらなかった中での、車との接触未遂。
それが君島さんではなく、先生の身に起こった。

「これに警告の意味があるのだとしたら……」

そんな不安が胸をよぎる。
窓を開けると、かすかに雨の匂いがする。
一雨きそうだった。

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