君島親子の依頼を受けてから二週間が経過し、調査は終了した。
小さなトラブルはあったものの、弘樹たちが心配していた車や郵便受けへの被害などはなかった。
現状では、運悪く悪戯に遭った……と判断するのが妥当だろう。
「引っかかりを感じるのは、ただの気のせいか……」
俺は昨晩の弘樹の様子を思い出す。
依頼が終わり、昨夜は弘樹とバーかすみで飲んだ。
あれから、父である龍之介が他界したそうだが、他は問題なく生活しているという話だった。
裕太も変わらず元気にやっているだろうか……
俺は弘樹の忘れ物を届けるために、君島工場に向かうところだった。
駐車場に止めてあるミニのドアに手を掛ける。
その時、近づいてくる足音。
「ちょっと待てよ」
「…………」
見るからに堅気ではない、チンピラとしか言いようのない男がゆっくりと歩いてくる。
何者だ?コイツは……
「アンタ、有名な探偵さんだろ?たしか……神宮寺だっけ?」
男はミニのボンネットに手を置いた。
「何か用か?」
「何か用かって……そりゃあ、用があるから声をかけたに決まってんじゃねぇか」
男が唇の端を上げる。
同時に、俺の背後で何かを振り上げるような風が動いた。
「!」
後ろには、もう一人の別の男。
俺の頭上には、鉄パイプが振り下ろされようとしていた。
襲いかかる二人の男が、事件の幕開けを知らせる。
君島家の調査中に起こった出来事、起こらなかった出来事……
そのどちらにも、警告の意味があったのだと確信する。
相手は俺のことを知っていた、計画はすでに進んでいたのだ。
そして、始まる復讐の輪舞――――