私は御苑洋子、神宮寺探偵事務所で助手を務めている。
所長である先生は調査の為に外出中で、私は事務仕事を進めていた。
先生は先週から、君島製紙工場と君島弘樹さんの自宅周辺を調査している。
「先生がお帰りになる前に、このファイルをまとめてしまわないと……」
私はここ数日の調査結果をファイルにまとめていた。
今のところ、大きな動きはない。
「今日は……弘樹さんのお父様の入院が長引きそうだと連絡があったくらいね」
君島家の家族構成は依頼人である君島弘樹さん、君島裕太さん。
そして、裕太さんの祖父、君島龍之介さんが親子三代で暮らしている。
弘樹さんの奥様は裕太さんが幼い頃に他界され、裕太さんは龍之介さんと弘樹さんに育てられたそうだ。
「先生が調査を開始してからは、不審なことは起きていないみたいだけど……」
かえって、その動きが気になると先生は言っていた。
相手がこちらの動きに気づいて、様子を見ているのかもしれない……
私は日が傾き始めた窓の外を眺める。
時計に視線を移そうとした時……事務所の電話が鳴った。
「はい。神宮寺探偵事務所です」
「み、御苑さん!?」
この声は……裕太さん。
「はい。どうされました?」
「じ、神宮寺さんが車に……!」
「!?」
受話器の向こうの裕太さんの声は震えていた。